名刺印刷考

 そろそろ夏のコミケに合わせた自身の名刺作成を控えているのですが、名刺印刷のコストを本気出して考えてみました。自分用のメモもかねているので説明がかなり割愛されてますが、参考になればと思います。

紙の基礎知識

紙質

 名刺においてはコート紙、マット紙、あるいは上質紙を使うのが一般的です。

 上質紙というのは、化学パルプ配合率が100%の洋紙のことで、パルプが表面に露出しているものです。パルプが表面に露出しているため、インクによるにじみが発生しやすく、染料インクの場合は特に解像度が低くなります。しかしながら、同一米坪であれば後述のコート紙よりも紙腰・断裂強度・引張強度・不透明度において優れており、インクによって印刷を行わないレーザープリンタ用の用紙としてよく使われています。薄口のものはPPC用紙にも利用されています。

 マット紙・コート紙というのは、どちらも印刷用塗工紙といわれるものの一種で、クレー(カオリン)や炭酸カルシウムなどの白色顔料と、デンプンなどの接着剤を混合したものを、上質紙の上に塗り、平滑度を上げて作っています。同一坪量の上質紙よりも耐久性には優れませんが、それぞれに特徴があり、マット紙は非光沢の塗料を塗った非光沢紙で、特に記入されている文字の視認性に優れ、コート紙はグロス系の塗料を塗った光沢紙で、写真などを印刷した際の画質に優れます。

 会社の名刺においてマット系が多いのはこのためともいえるのではないでしょうか。
(このほか再生パルプの上質紙、非木材パルプの上質紙もありますが割愛します)

坪量・連量の違い

 紙の厚みなどを推し量る単位として、連量(〜kg)と、坪量(g/m^2)という単位があります。
 坪量というのは、SI単位が示すとおり、1平方メートルあたりの重量です。米坪量という正式名称が略された形です。そのため、米坪という言い方もしますが、同義です。

 解釈が難しいのは連量のほうなのですが、連量というのは、紙を流通させたり売買するときの取引の場で使われることの多い単位なのですが

  • 1連(1000枚・板紙の場合は100枚)の、
  • 一般的には四六判 788mm×1,091mmにおける重量
    • (場合によって菊版 636mm×939mmであることもある)

ということになります。モノによって例外がありますゆえ、同質の紙における密度や厚みの目安としてよく使われる単位です。

 例えばよく同人誌の表紙に使われるアートポスト180kg(王子製紙「OK特アートポスト」180kg品)は、四六判であり、1連が1000枚で重量が180kgあるということです。

 なお、アートポストには125kgの製品もありますが、坪量はアートポスト180kgと同じです。
どういうことかというと、アートポスト125kgは「菊版」なのです。先ほど提示しました菊版の面積は、四六判の69.466%程度ですので、180×0.69466=125.038、すなわち125kgということになります。

 坪量と連量の変換についてですが、坪量=連量/0.859708(菊判の場合は0.597204、板紙の場合は、この計算結果に対して10倍。)となっています。つまりアートポスト180kgの場合、坪量は209g/m^2となります。現実的には0.86(四六判)、0.6(菊判)で覚えておけばよいでしょう。

市販の名刺用紙について

紙種

 インクジェット対応のものもレーザー対応のものも、現実的には名刺用紙として販売されているものの多くが塗工紙です。品質的にはわかりやすい変動は、人の目ではよくわかりません。

 ですが、レーザー対応のものをインクジェットプリンタにて印刷すると当然にじみますし、インクジェット対応の紙でレーザープリンタにて印刷すると、トナーが剥離しやすい傾向にあります。プリンターによって適正な印刷用紙を選びましょう。

紙の厚さ

 名刺によく使われるのは特厚口といわれる、大体255〜280g/m^2の用紙ですが、プリンターによってはこの厚みの名刺用紙を巻き込めないものも存在します。厚紙を印刷できないようなエントリクラスのプリンターにおいて、特にご注意ください。

 薄めの名刺は、大体135kg(157g/m^2)程度からありますが、あまりペラいと見栄えがあまりよろしくないと思います。

名刺サイズ

 名刺のサイズには4号名刺(91×55mm)、欧米サイズ(89mm×51mm)、3号名刺(85mm×49mm)、小型4号(70mm×39mm)などがありますが、日本においては、企業の名刺のほぼ99%は4号名刺です。名刺用紙でもこのサイズは圧倒的にラインナップが揃っています。

 3号名刺は、別名「女性名刺」ともいわれ、企業の女性社員等においてよく利用されていましたが、最近は男女雇用均等にかかる問題からほぼ消滅しました。現在ではお水の世界や、女性の個人用名刺としての利用が残るぐらいでしょうか。小型4号はお水の世界でよく見かけられますが、このサイズになると名刺としての利用よりはメッセージカードとしての利用のほうが多いように思います。

 OFF会などで名刺交換をするようなタイプの人は、相手の整理しやすさも考え、4号名刺で作ったほうがよいと思います。名刺ケースも、4号をベースに作られていますからね。

8枚切りか10枚切りか、91×55mm切断済か

 さて、一般的にA-ONEやヒサゴ、ELECOMなどで製品にされている、自家印刷向けの名刺用紙においては、8枚切り、10枚切り、91×55mm裁断済と3種類のサイズがありますが、8枚切り、10枚切りはいずれも、A4サイズ1枚の印刷用紙から8枚あるいは10枚取れるようになっています。

 ちなみに、8枚切りにも10枚切りにも、さらに2種類のカット方法があり、すでにカットしたものを、裏地で擬似接着しているクリアカットタイプ(ヒサゴではスッキリカットと呼称)、細かいミシン目によってつながっているタイプの2種類があります。後者は、ミシン目の部分で紙を引きちぎることになるため、断面がきれいではありません。前者はその問題をある程度解決していますが、紙送り方向が指定されており、複合機インクジェットプリンターレーザープリンターの一部の機種では紙が中で外れてつまってしまうなどといった事故を引き起こす可能性がありますから、印刷は手差し給紙で行うべきでしょう。

 91×55mm裁断済みについては、プリンタ選びにも関係してくるので後述します。

名刺印刷を考慮したプリンター選び

 名刺印刷を安全に行えるプリンタとはどういうものかというと、「手差しでもトレイでもいいから、紙をなるべく急角度に曲げずに給紙できる」厚紙対応のプリンタであることです。

 例えばレーザープリンタですと、片面プリンタならXerox DocuPrint C1100であるとか(220g/m^2まで対応)、沖のC3440n(200g/m^2まで対応)とか。両面プリンタならCanonのLBP7200CN等といった選択肢がいいと思います。筆者が試作したのはXeroxのDocuPrint C830上です。

 なお、裁断済91x55mm 100枚組などとして売っているタイプの名刺用紙は、本当ですと名刺プリンタなどで印刷するのが望ましいのですが、家庭用レベルとしてのやりかたで私が感心した方法は、フォトプリンタを使う方法です。この方法は私も目からウロコでした。

 ただ、注意しなきゃいけないのは、昇華型プリンタでは専用紙を要することです。なので選択肢としてはEPSONのインクジェット型フォトプリンタとなります。カードサイズへのふちなし印刷に対応しており、このカードサイズというのが名刺サイズとイコールなのです。それに、もともとは最大でもはがきサイズの印刷を前提としているだけあって、紙送りもずっと安定していますから、安心して刷れる・大掛かりでない設備としてはアリだと思います。

 ちなみに、裁断済91x55mmの紙への印刷は、Canonの多くのモデル、及び上位機種のEPSONのプリンタでも対応しているようなので、新たに買わなければならない、というわけでは必ずしもありません。ご心配なく。

名刺作成ソフト

 A-ONEからは「ラベル屋さんHOME」、ヒサゴからは「ヒサゴ工房」および各ソフト対応テンプレートがダウンロードできます。DTP屋にもうれしいai形式もあります。

 また、ELECOMからも「エレコムらくちんプリント」というソフトがあり、Webアンケートに回答することで入手できます。