電車内制作P流、VOCALOIDの打ち込みについて

MIDI打ち込み

 私、電車内制作Pの場合は、基本的に自身がVOCALOID職人でもあるtakaboさん(http://www.tkb-soft.hmcbest.com/domino/)の「Domino」を利用して打ち込みしています。ここで1コーラス分のリアルタイム入力後、16分音符や32分音符単位でクオンタイズをかけてMIDIファイル出力します。
 なお、MIDIキーボードにはSK-88Proを利用、MIDI端子接続とDAIFにはTASCAM US-122Lを利用しています。この作業は基本的に自宅で行っていますが、通勤中で出来ない場合などはVOCALOIDに直接Thinkpad X60トラックパッドで打ち込んでいます。

VOCALOIDでの編集について

 VOCALOIDにインポート後、セクションごとに分けたMIDIを作成(Aメロ、Bメロ、サビなどといった単位に分けます)し、一度各々のデータを出力します。
 私の場合、VOCALOIDは初代がメインですので、最初のmidiファイルと混同しないよう、VOCALOID用のmidiは1個ディレクトリを掘り、「(曲タイトル)-(曲の部位)-(バージョン番号).mid」という形で管理しています。

例)私が打ち込んでいるノーザンクロスの場合
 nc-1Amelo-01.mid
 nc-1Bmelo-01.mid
 nc-1Sabi-01.mid
 nc-2Amelo-01.mid
 nc-2Bmelo-01.mid
 nc-2Sabi-01.mid
(以下略)

 その後、肝心の歌詞を打ち込んだり調教を行ったりします。

VOCALOIDでの調教について

PIT(Pitchbend)とPBS(PitchBendSensitivity)の有効活用

 テンポが高速であればあるほど、ポルタメントでは追いつかない局面でこれら2つを組み合わせ、音程を取ることが重要になります。この2つのパラメーターはこういう仕掛けになっています。

PitchBend
ピッチを-4095〜0〜4096まで、8192段階で設定する仕掛けです。初期値は0です。
PitchBendSensitivity
ピッチベンドの深さを設定します。0〜12半音(1オクターブ)の範囲で設定します。初期値は音源に依存しますが、殆どの場合2です。なお、PitchBendSensitivityが12のとき、PitchBend-4096〜0の間で12半音、0〜4096の範囲で12半音、ピッチベンドを行うことが出来ます。

 よって、例えばPitchBendSensitivityを4程度に設定し、0、1024、2048、3072、4096というピッチベンドの数値を与えて歌わせる事が出来、この場合、歌詞欄にハイフンを入れて調教するときに比べ、綺麗なロングトーンを実現できるようになったりします。特にポルタメントスピード自体をピッチベンドの角度のきつさで調整できることは非常に有効になります。

BRI(Brightness)で音の立ち下がりを人間っぽく

 人間が歌を歌うときの音量は立ち上がりから立ち下がりまで一定ではありません。特に立ち下がりがぶつっと途切れるのは非常にエレガントでありません。コレは何とかしないといけないですね。

 解決の手段として、ビブラートを掛けながら立ち下がりの音量を下げていくわけですが、人の声というものは立下り時に曇って聞こえます。しかしピッチが大幅にずれてしまうと聴感上、よろしくありませんのでロングトーンの終わりで、デフォルト数値の64を起点に、1/16〜1/32分音符ごとに、斜めに傾いたのこぎり型に、ぎざぎざに立ち下げていきます。
(打ち込み例)
赤丸で囲った部分は、32分音符刻みで下げていっています。これはVOCALOID2 初音ミクの場合ですが、VOCALOID MEIKO、LOLA、MIRIAMでも同様に制御出来ます。

ただしLOLAの場合はすっぴん調教として、Dynamicsモードを簡易モードにし、デクレッシェンドしながらLOLA専用のビブラートを掛けることでも綺麗な仕上がりが期待できます。

SoundEngine Freeで前処理

 VOCALOIDで出力した生のWAVファイルは、VOCALOID MIDIファイルと同様整理しますが、1trackあたり1音にするのでファイル数はかなり多くなります。これを1ファイルずつ、SoundEngine Freeに流し込み、前処理のエフェクトをかけます。
 初音ミクと違い、MEIKOはそのままReverb等のエフェクトをかけても音が拡がらないので、その対策です。SoundEngineでサラウンド、スペースEQを掛けます。

<サンプル>
 瀧廉太郎「花」より一部抜粋・前半がエフェクトなし、後半がエフェクトあり
 Download

設定は、めんどくさいので私が使っている設定スクリプトをここに直接書きます。

[File Open]

[Surround]
Parameter1=6
Parameter2=4
Parameter3=-10
Parameter4=0
Parameter5=20
Parameter6=6
Parameter7=0
Selection=0,-0,-1

[Space EQ]
Parameter1=8
Parameter2=0
Parameter3=5.6
Parameter4=0.56
Parameter5=4.8
Parameter6=1.07
Parameter7=0
Selection=0,-0,-1

[Adjuster]
Selection=0,-0,-1

音声編集について

DAWにデータを流し込みます

 さて、いよいよデータの流し込みです。私の場合はMagix Samplitude 8 Professionalを利用しています。楽曲のテンポとVOCALOIDの発音テンポ、そしてDAWのマスタークロック側のBPMも合わせ、どんどん配置していきます。

エフェクト等

 必要なものとして、まずはEQ、Compressor、Reverbの3つが挙げられます。楽曲によってはChorusやDelayも利用します。Reverbに関しては、私はインパルス入力がある付属のRoom Simulator系エフェクトを採用しています。
 ただReverbに関しては、場合によってはVST FxであるClassic Reverbを、Chorusは同じ作者のClassic Chorusを利用することもあります。
 で、EQについては4バンドもあれば私には十分(嘘です。かなり無理してますorz 本当はyuukissさんみたいに細かく調整したいです>< グライコ系で音の安定したVST Fx教えて下さいorz)なので内蔵のを使ってます。具体的には100Hz、400Hzは下げ気味、5KHz、12KHzは上げ気味でゲイン調整をしていきます。

パン振り等

 別にフランスパンをロイツマミクのネギみたいにぶんぶん振るわけではなく、左右への音声の振り分けについてです。が、Room Reverbを掛けているので、基本的にボーカルパートをパン振りする必要はありません。ただここで演出上のパンの極端な振りがあれば、動的にパンが振られるよう調整します。

音量調整等

 基本的にはCDと似たような仕上がりにするために、わざわざカバーモノの場合は、あっても-1dB程度しかベースの音楽の音量レベルは下げません。その分、普通ならばクリップが発生するぐらいまでボーカロイド音声のほうの音量を上げます。
 幸い、私が利用しているSamplitude 8の場合、クリップせず、自動的にリミッターが働いているようで、プチノイズは発生せず、音圧を効率的に上げられます。

書き出し

 44.1KHz 16bitステレオPCMで書き出し、あとはLameとかで調理します。